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雫は『ポツリ』と暗く呟いた。流星は何となく、雫が『そのこと』を思い出した理由に思い至った。
雫が『大惨事』のことを思い出すのは、決まって同じ『雷雨の日』だったから………。
「会長の声が………あの時の『極道』みたいに『ドス低い声』だったから…………それで…………。」
澱みながら答える雫に、流星は軽い眩暈を感じ額に手を当てた。 どうして、あの会長は『面倒なこと』ばかりするのだろうか?
(ちっ、あのバカ。余計なことばっかりしやがって………。)
心中で舌打ちし、毒づく流星。雫と違い、元々流星には『極道』に対し、そこまで『特別な思い入れ』があるわけじゃない。精々『住む世界が違う』程度の認識だ。
―けれど、それは『雫』が絡まぬ場合のみだ―
雫の心と躰に『消えない傷』を刻み込み、『絶望』を与えたことだけは、どうあったって許せなかった。
『まっさら』であった雫が『右目の傷』と『己が存在』を『罪の証』だと責め苛む『原因』を作ったのは『極道』なのだ。
確かに、その『極道』達と宝生達は『無関係』だ。だが『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』と言う言葉もある。
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