第1話

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 「命が惜しかったら、言うんだな。一体誰に何の目的で俺たちを生け捕りにしろと命じられた」  男は激しく首を振った。  「し、知らねえ。お頭が命じられたことに、俺らは黙って従ってるだけだ」  「ウソつけ。さっきの様子を見てりゃあ分かる。お前、一味の副長だろう。知らねえ訳がねえ」  ウシワカは刀の切っ先をさらに首筋に近づける。  「やめろ。白状する」  男は切っ先に目が吸い寄せられたようになり、震え出した。ウシワカが一旦切っ先を引く。  「赤ずくめの女だよ」  「赤ずくめ?」  「平家の家紋を額のところに縫い付けた頭巾を被ってて、顔は見えねえ。そんで、真っ赤な小袖を着ててよ。深紅の鞘の刀を差してる。下駄の鼻緒も赤だ」  「ほう。平家か。赤ずくめの目的は何なんだ」  ウシワカは、改めて切っ先を男に向けた。  「わっ。白状する。白状するから、やめてくれ」  男の額に、汗が噴き出す。  「ここ鏡の里に、不思議な力を持つ鏡があるらしいんだよ。魔鏡ってやつだ。そいつがあんたの手に渡ると厄介だから、手に渡る前に拘束しろ。もしすでに持ってたら、鏡ごと拘束しろって言ってた」  「魔鏡? どういう力があるんだよ」  「普通の鏡なら、映るのはありのままの姿だろ。ところがこの魔鏡は、映る者がその正体を隠している場合、正体を暴いて真の姿を映し出すっていうんだ。昔々のちょっと狂った鏡作りの名人が生み出したって代物らしい」  「その魔鏡とやらは今どこにあるんだ」  「半分は、この村にあるカガミ神社のご神体が祭られている台座の下に隠されてる」  「半分?」  「そうだ。魔鏡はその魔力ゆえに、当地の領主が家臣に逆心がないかどうかを試すために利用された。そのため表面上はにこやかに笑っていても鏡に憤怒や憎しみの顔が映った者は次々と処刑されたんだと。これは領主領民ともに災いを招く鏡であるとして、昔々のカガミ神社の宮司が二つに割ってしまったと言われてる」  「で、残りの半分は?」  男は首を振った。  「さあ。そこまでは知らねえな」  ウシワカは、男の顔へ刀の切っ先をさらに近づけた。  「何か、手がかりはねえのか」  「待て。待て」  男の額に、再び汗が滲んだ。
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