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「あるよ。たったひとつ。里の言い伝えで、『鏡の半分を見れば残り半分が見つかる』と言われているんだ」
「それだけか」
「それだけだ。これ以上のことは、神仏に誓って知らねえ」
男は額から汗を飛ばしながら、ぶんぶんと首を振った。
ウシワカは男を縛り上げていた縄を、刀で切る。
男の体から、縄がパラリと落ちた。
「ふん。これ以上知らねえのは本当のようだな。今回は、見逃してやる」
男は立ち上がると、大きく息を吐いた。
「俺の親父は平家と戦って敗れ、死んだ。俺にとって平家は親の仇なんだ。平家がその魔鏡とやらを欲しがってるなら、その狙いを阻んで魔鏡を俺が手に入れりゃあ、親父の仇討ちに繋がる」
ウシワカは、男を睨みながら語りかけた。
男は返事をせず、仲間が駆け去った方角へ走り出した。
その後ろ姿へ、ウシワカは叫んだ。
「赤ずくめに伝えておけ。魔鏡は俺が頂戴するとな」
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