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すぐに思い浮かんだ回答はあったが、答えるのをためらう。安治の部屋に同居人が置かれたのは少し前からだ。
表情を読んでかどうか、ジローが話題を振った。
「彼女の話してよ」
「……おりょうちゃん?」
「名前は知らないけど」
「んー、じゃあ……」
安治は頬をかきながら、伏し目がちに答えた。
「おりょうちゃんは……すごい美人で……スタイルもよくて……やさしくて、気が利いて……料理がうまくて……パ」
パーフェクト、と言おうとしたのにかぶせて「あれもうまい?」と聞かれた。
安治はひとまず、深呼吸をした。顔が熱い。
「どしたの?」
ジローは意外そうに尋ねた。その顔にやらしい気配はない。
安治は、いったん落ち着いて確認しよう、と思った。認識の齟齬があるかもしれない。呼吸を整える。
「……あれって何?」
「営み」
齟齬はなかった。
「おまえ、そういうこと、堂々と言うか?」
「はん? 堂々とじゃなかったらいいの?」
「そういうことじゃ……いや、そういうことか……。言い方ってあるじゃん」
「よくわかんない」
わざとらしく子どもっぽい仕草でかわされる。
「彼女の好きなところを3つ挙げよ」
「3つって、だから……むしろ悪いところのほうがないよ」
ジローは両手を組み、その上に顎を載せて、上目遣いにじっと見た。
「……なんだよ、別に嘘じゃないよ」
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