3人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「性別は男よ。モデルと同じ性別だから」
「はあ。じゃあ、顔をわざと変えてる?」
「そんなことしないわ。偶然よ。作る過程でまったく同じのは出来上がらないの」
「なんでタナトスをいっぱい作ってんの? 影武者?」
「違うわよ。順番が逆。タナトスの見た目はこの子たちがモデルなのよ。オリジナルは、大昔にいた美少年。かわいいでしょ?」
「えーと、ほかにも大勢いるわけ?」
「タナトスの顔? 大勢はいないわね」
やりとりをする二人の顔を交互に見ていた件の子が突然、
「ディダスカロス」
と、はっきりした声で言った。
安治は驚いたが、
「なあに、パイス」
とほしこが応えたのを見て、何か呼びかけの言葉らしいと気づく。
「僕も安治と話したい」
どこかわくわくした表情で訴える。
安治は再び驚いた。その積極的な態度は、タナトスにはほとんど見られないものだった。
ほしこは軽く笑った。その子ではなく、安治に言う。
「実はね、そのつもりで用意していたのよ。あなた、この子の話し相手になってもらえないかしら」
「話し相手って……タナトスは?」
最初のコメントを投稿しよう!