エンケパロス

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「もちろん、この子とタナトスを会わせちゃだめよ。タナトスにこの子の話をするのも禁止。――どこかこの階の部屋を使って、日に30分でも会話をして、報告してほしいの」 「何かの実験?」 「ええ、ちゃんと人間らしいかの確認。――ふつうに人間だと思って接して、違和感があるかどうかの報告をお願いしたいわ」 「タナトスと同じじゃん」 「どこがよ。――タナトスには、あなたが人間らしさを教えるんでしょ。あなた、自分の仕事わかってる?」 ほしこが怪訝な顔をした。安治は失言に気づいて、切り上げようとした。 「わかったよ。30分くらい話し相手になればいいのね。どこ?」 「2つ隣のブースが空いてるわ。わかってると思うけど、ここでのやりとりはすべて録画録音されてますからね」 「はいはい。――行こっか」 声をかけると、短髪のタナトスは嬉しそうについてきた。隣に並ぶと、いつものタナトスよりいくらか背が低いことに気づく。 かわいい子だな――いつものタナトスにはついぞ持つことのない感想を安治は持った。
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