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安治は唐突に、この子がタナトスよりも女の子っぽく背が低い理由に思い当たった。年が若いのだ。
タナトスは設定上21歳らしいが、目の前の子は高校生くらいに見える。
「ねえ、タバコ持ってない?」
その高校生くらいの子が言った。安治は面食らう。
「――持ってない。吸わないもん」
「えー、ダサ」
やはりけらけら笑う。
「――ジロー」
「ん、何?」
「昔うちで飼ってた犬の名前だけど、ジローちゃん。――嫌?」
パイスはぱっと目を輝かせた。
「いいじゃん」
「あ、そう? じゃあそれで……」
「忘れんなよ」
「ん?」
「俺に似たヤツたくさんいるから……忘れんなよ」
そう言った目に、微かな悲哀が浮かんでいた。
忘れるはずがない、と安治は思った。この子とタナトスを間違えることは、今後決してない。
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