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2日目
その日はタナトスと一緒に夕食をとる日だったので、ほしこの部屋へ行くのが遅くなった。声をかけてドアを開けると、待ちかねた様子でジローが出てきた。
「おそーい」
「ごめん」
安治はなんだか浮気でもしているような気になった。今日一日、タナトスにジローのことを話さないでいるのに、案外苦労した。
衝立の奥にいるのか、ほしこの姿は見えない。ジローが呼びかける。
「ディダスカロス、行ってくるよー」
「はーい。……安治、そこの持ってってね」
「そこ? ああ……」
甘い缶コーヒーとお菓子がカゴに入れて置いてある。それを持って二人は昨日と同じ部屋へ向かった。
「今日はどんな日だった?」
座るが早いか、ニコニコして聞いてくる。別人とはわかっていても、タナトスとの落差に戸惑いを覚える。
「今日は……」
言いながら視線を逸らして缶コーヒーを開ける仕草に、ジローは聡く反応した。
「なんかテンション低ーい」
「……わかる?」
「カノジョとなんかあった?」
「彼女? ――あ、いや? 全然……」
「じゃあ、また誰かに怒られたんだ」
「またってなんだよ。別に怒られてないよ。――今日は」
「じゃあ、タナトスだ」
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