2日目

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安治は、喉も乾いていないのに缶コーヒーを飲んだ。いたずらっぽい表情でジローが見てくる。 「当たり? ねえ、当たりでしょ」 「……うるさいな」 「うるさいってー」 けらけら笑って自分も缶コーヒーを飲んだあと、急にふてくされた表情でそっぽを向いた。 「だって、つまんないんだもん」 その目に涙が浮かんでいる気がして、安治は焦った。 「ごめん」 「は、なんで謝んの?」 こちらを見た目は光っていなかった。しかし先ほどより機嫌が悪くなっている。 安治は戸惑った。何を言っていいのかわからない。なるべく無難な話をと思うが、相手がパイスであること、タナトスの存在を意識させる話題を避けようとすると、何も思いつかない。 「ディダスカロス」 不意に安治の背後を見てジローが言った。ほしこが来たのかと振り向くと、扉のない入口のところでニヤニヤしながら北条さんが立っていた。そのまま何も言わず立ち去る。 「――それ、ドクターって意味?」 「ん?」 「その……呼び方」 「さあ、意味は知らない」 「なんで名前で呼ばないん?」 「名前で呼んじゃいけないんだもん」 「いけない?」 「安治、親を名前で呼ぶ?」 「ああ、なるほど……。親って意味なのかな」 「知ーらない」 チョコを一つ取ってふんぞり返る。タナトスと比べてだいぶ行儀が悪い。     
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