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エンケパロス
いつもの報告をしにほしこの部屋を訪ねた安治は、内側から顔を出した人物を見て、ぎょっとすると同時に軽く後悔した。
ぎこちなく挨拶をする。
「や、やあ……秋平ちゃん」
秋平はタナトスとも並ぶ美少年だ。身長は160センチほどと小柄で線も細く、年齢は16、7歳に見える。「犬目の秋平」と呼ばれることもあるとおり、黒目勝ちの潤んだ丸い瞳が印象的だった。
名前を知っているくらいで、直接の面識はほとんどない。それでも安治は強い苦手意識を持っていた。この美少年は、近頃中年太りが著しいほしこの恋人とされる相手だった。
「秋平ちゃんがいるんじゃ俺、出直そうかな……」
「やあね、秋平じゃないわよ」
部屋の奥から声がかかった。
「え?」
そちらを覗き込んだ安治は、言葉を失った。
「あの子はもっと可愛いわ」
言いながらほしこは、手近にいた秋平の肩に手を置いた。
さして広くもない部屋のなかには、4人ほどの秋平と、2人のタナトスがいた。もっとも、格好や顔が微妙に違うので、その数え方が正しいかはわからない。
「――うわ……」
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