『SINGULAR POINT』

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「ええと、今までも付き合っていましたよね?」  石田は、かなり前に掘られていた。それは、男に抱かれたという事だろう。 「まあ、そうなるのかもしれないけど。今までは後ろからで、動物の交尾みたいなもん」 「はあ?」   しかし、今回初めて正常位になったのだそうだ。 「体位の違いですよね?やっている事は同じというか」 「違う」  石田の相手は弥勒と名乗った。タクシーは二日間の貸し切り、別荘という海の見える山の家にタクシーを走らせた。  小さいが綺麗な家で、付近には建物はない。聞くと、周囲の山毎買い取ったらしい。セキュリティーを山を含んでかけているので、入ってくる人もいない。  露天風呂に入り、一回目の行為が始まる。それから、ベランダ、庭と外で行い、夕方にはディナーが運ばれてきた。  ディナーの後でベッドに移り、又、続きが始まる。 「いつもなら、ベッドでも同じなのですけど、今回は正常位でしかも……」  何もつけていなかったという。流石に石田は嫌だと断った。 「そうしたら、付き合ってくださいと頭を下げられた」   月一回、二日間の貸し切りでこの別荘に来て欲しいと言われたらしい。  弥勒があまりに熱心に口説くので、石田は了承してしまった。 「それは、大きな差ですね」  今度は朝まで突き上げられた。  朝から昼まで眠り、もう一回してから帰途についたという。 「弥勒は絶倫ですよ。だから、相手が一人では殺してしまいそうだと」  弥勒の仕事も本名も分からないが、別荘や服装から金持ちとは分かる。 「弥勒か……」  その名前に意味はあるのだろうか。特徴を聞くと、三十半ばの会社役員風だという。これは、宍戸ではない。 「生でされたら、抱かれたということだろう?」  そこが基準であるのか。  石田の心配は、やはり弥勒の素性であった。何か犯罪に関わっているのかと、心配になったという。 「どうして、心配なのですか?」 「……電話で、自分を殺すのも殺人ですよ、思い留まりなさいとか」  どちらかというと、諭している。 「動物は正しい死を知っているとか」  沢山、変な電話がかかってきていたらしい。宗教なのかとも思ったが、余りにも死という単語が多く、心配になったという。 「弥勒はさ……」
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