第一章 人食いの箱

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「そうですね。初めて来た時は、ここでいいの? テレビとか雑誌とかの、モデルの仕事は無いのと思い、 もしかして美人は三日で飽きるという奴なのかなと心配しましたけど」  ベテラン事務員の及川が、送別会に子供を連れて来ていた。 及川は、凄腕の事務員なのだが、今は子育てが楽しいという。 「でも、三日で飽きるどころか。三日では人間なのかも分からないうえに、 起きているのか、本当は眠っているのかなどという状態だし」  及川の子供が店内を走る。及川は子供を追い掛けて、畳に座らせた。 送別会に子供を連れて来るなど、アットホームな面が、この営業所のいい所であった。 「全然、営業していないから、これはダメかと思ったら、売上は全国レベル、 いつの間にか、本社に喧嘩をする程の営業になっているしね」
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