第一章 人食いの箱

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 それは、本社の営業部が理不尽な事を言ってきたせいだ。 半年以上も前に企画計画し、品物にした製品を、納品前の在庫の状態の時に、 勝手に自分の顧客に売ってしまったのだ。  フリーの在庫だったと主張してきたので、企画書を持って喧嘩をしてきた。 ここには、半年待っている顧客がいる。 大口顧客ではないが、俺にはゆっくりと長く付き合う事のできる、いい企業ばかりであった。  実際は、大口顧客でも、明日には切られる恐れがあるので、 皆、早く納品し次の注文を取ろうと焦る。 俺は、大口に拘るよりも、長く付き合う事に拘りがあった。 「まあ、そのせいで、飛ばされましたね」  笑いが乾いてくる。
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