第一章 人食いの箱

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 もうひとり、温科というややぽっちゃりとした男性がいる。 年齢は三十歳で、淡谷を優しい眼差しで見つめ、せっせと企画課全部の仕事をしていた。 「氷花君、ミーティングルームにお願い」  川越に呼ばれて、部屋に入ってゆくと、幾つかの資料が置いてあった。 「ええと、殆どの資料は、機密文書だから出力していない。 会社の機密文書保管フォルダーにアクセスして読んでね」  この企画課は、社長の鶴の一声で作られた部署であった。 由に、決まった仕事があるわけではない。 普段は、営業と一緒に企業を回り、新製品の企画をしている。 これは温科が得意としていた。
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