第十六章 弥勒

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「今はラーメン屋松吉で、慶松も頑張っているよ」  会社員では、一人の客に、これだけの時間を掛けられない。 じっくり話を聞くなどできず、限られた時間で成果をあげてゆかなくてはいけない。  だから、慶松がこれで生計をたてなかったのは分かる。採算の問題ではないのだ。 「まあ、何かあったら俺にも相談してよ。俺は慶松さんに沢山助けられているからね」  慶松は、いい仕事をしているのかもしれない。 その日は、もう一軒納品すると終わりにした。 慶松が、野菜の仕入れに行くので、車を返さないといけない。  家に帰ると、知らない車が庭に止まっていた。 「慶松、納品終わったよ」  厨房に声を掛けると、家に入ろうとした。 「氷花、岩崎の両親が来ている」  玄関に入ると、リビングから口論している声が聞こえていた。 「役者志望ではないのでしょ、家に帰ってきなさい。 劇団って何なの?変な自殺とか、ミイラとか……変な人の集まりではないの」  この険悪な雰囲気の中に、入ってゆけない。 でも、俺はお茶をいれると、中に持っていった。
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