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「今はラーメン屋松吉で、慶松も頑張っているよ」
会社員では、一人の客に、これだけの時間を掛けられない。
じっくり話を聞くなどできず、限られた時間で成果をあげてゆかなくてはいけない。
だから、慶松がこれで生計をたてなかったのは分かる。採算の問題ではないのだ。
「まあ、何かあったら俺にも相談してよ。俺は慶松さんに沢山助けられているからね」
慶松は、いい仕事をしているのかもしれない。
その日は、もう一軒納品すると終わりにした。
慶松が、野菜の仕入れに行くので、車を返さないといけない。
家に帰ると、知らない車が庭に止まっていた。
「慶松、納品終わったよ」
厨房に声を掛けると、家に入ろうとした。
「氷花、岩崎の両親が来ている」
玄関に入ると、リビングから口論している声が聞こえていた。
「役者志望ではないのでしょ、家に帰ってきなさい。
劇団って何なの?変な自殺とか、ミイラとか……変な人の集まりではないの」
この険悪な雰囲気の中に、入ってゆけない。
でも、俺はお茶をいれると、中に持っていった。
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