第十六章 弥勒

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「こちらの氷花さんの方が、秀児よりも役者に見える。秀児、家に戻って来なさい。 田舎だけど会社を紹介するから」  岩崎は、下を向いていたが、ゆっくりと顔を上げた。 「もう少し、時間をください。ちゃんと、人と話せるように、なりたいのです」  緊張しなければ、岩崎はちゃんと話せる。 それに、裏方でも文句を言わず真剣する人間で、信用ができる。 「秀児、そういうのは慣れだから」  あまり、親子の喧嘩に顔を突っ込んではいけない。 俺が部屋に帰ろうとすると、岩崎が腕を掴んでいた。 「氷花、待って。俺の劇、観に来てくれるよね」  前回は観られずに帰った。
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