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俺は箱を開けて、泥の残る野菜の匂いを嗅いでみた。
懐かしい感じがして、土が付いたまま野菜を齧ってみると、弾けるように汁が飛ぶ。
俺は涙を流しながら、野菜を生のまま食べてしまった。
俺が飢えていた味がそこにあった。
そこで俺は、田舎に就職した。
毎日、おいしい野菜を食べる、それだけの夢であったが、叶えた事が嬉しかった。
そして毎日、取れたての野菜を食べる……はずだった。
「本社でも頑張ってください。氷花(しが)さん」
たった、二年で転勤になるとは思わなかった。
どこで間違ったのか分からないが、
田舎の小さな営業所で、常に十人未満の社員数が心地よかったというのに、
今日は俺の送別会になっている。
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