第十六章 弥勒

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「氷花さんは、ご長男でいらっしゃるの?」 「いいえ三人兄弟の真ん中です。跡取りではないので、気楽なだけです」  岩崎の両親は溜息をついていた。 岩崎は長男で、下に三人いる。妹が二人と、弟が一人で、皆大学への進学を希望していた。 後三人大学に行かせるのは、親にはきつかった。 「秀児には、ちゃんとした所で働いて貰って、家に少し入れて欲しいのです」  岩崎の家の事情など、俺は知らなかった。 「バイトして家にはお金を入れます。もう少しだけ待ってください」  岩崎の口調が強くなっていた。 「岩崎、俺は自分の部屋に行くから」  やっとリビングを抜けて、自分の部屋に入る事ができた。 リビングでは、まだ岩崎親子が口論している。
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