第十六章 弥勒

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 俺は親に期待されてない分、自由気ままにやってきた。 岩崎の長男という気持ちは、きっと理解できない。  俺は岩崎親子の喧嘩を聞きながら、桜坂の通信機を設計してみた。 桜坂は生まれつき、指が無かった。だから、指を動かすという指示が脳から出ない。 しかし、腕の先端で文字や図形を描いてきたので、ミリ以下の操作も可能であった。 「腕の動きか……」  考えをまとめようと、ベッドに飛び込む。 天井を見ていると、部屋をノックする音が聞こえていた。 「どうぞ」  入って来たのは慶松であった。 「あ、桜沢さんの腕に装着してみようとしているのか」  慶松が俺の書いた設計図を見ていた。
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