第十六章 弥勒

16/22
前へ
/460ページ
次へ
「氷花、どうして大学院に進まなかったの?」  先ほど、岩崎もそんな事を言っていた。でも、それは慶松だって同じだろう。 「災害の前に、人は無力だよね。その無力さを機械では補えない」  俺の場合は、研究をして、知識を増やしていっても、その先には何も無かった。  慶松が俺が寝転んでいるベッドに来て、上から俺を覗き込んでいた。 「でも、氷花は目の前の人を助ける」  今は、岩崎をどうするかであった。 「まず、岩崎の役者としての素質を見たいよね」  舞台を見に行こう。  分かっている事は、岩崎が家事はパーフェクトであるということ。 それと、岩崎のボディガードの素質は凄い。人を守るという行為を、岩崎は迷いなくしていた。  後、あまり人と接していい思い出ない俺にとって、数少ない、 一緒に暮らしたい人物であった。 「……俺、岩崎と暮らしていたい」  岩崎は、俺に帰れる場所を提供してくれる。 しかも快適な場所で、安心して眠る事ができる。
/460ページ

最初のコメントを投稿しよう!

649人が本棚に入れています
本棚に追加