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「いいよ」
でも、慶松に睨まれていた。
「俺は人間関係で、足を引っ張りあうというのが性に合いませんでした。
実家が旅館で、家族経営でしたので、
客に対し全員で一丸となって対応するというのが当たり前でした」
足を引っ張って、自分の成績を上げてゆくという行為、
そして、それを容認して笑っている上司に、慶松は憤りを感じていた。
でも、新人の慶松の言葉など、誰も聞いていなかった。
そして、慶松の仕事を、上司が気に入った部下の名義で報告しているのを聞き、
慶松は耐えられなくなった。
「今、会社員を辞めてみて、会社員を志すということは、
上司が正義と割り切る事も必要だったと分かります」
でも、何かを得るためには、苦痛が伴う事もある。
そして、きれいごとを言ってはいけない世界であったのだ。
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