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慶松の身近に会社員がいなかったので、基本を教えてくれる人もいなかったのだ。
「秀児君にないのは、ズルさです。役者に必要なのは、ズルさです」
言い切ってしまっては、実も蓋もないが、岩崎が残れる何かを掴みたい。
「修行していると?」
「そうです」
岩崎の両親が、無言になっていた。すると、俺も心が痛む。
俺が何か言い掛けると、岩崎が立ち上がった。
「この二人を見てください。慶松店長はかっこいい二枚目です。
氷花は、目も覚めるような綺麗な姿です、美人です。この二人だけで、
この家に住むのは危険です」
どういう危険なのだ。俺は、岩崎の顔を見てしまった。
岩崎は、冗談を言っているのではなく、本気で言っている。
「氷花が越して来てから、外に不審者一回、中に不審者一回」
すいませんでしたと、俺が頭を下げる。
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