第十六章 弥勒

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「しょうがない」  岩崎の父親が折れてくれた。 「秀児、もう少しだけだからな!」  岩崎が何かをしたいと言ったのは初めてで、父親は少し応援したくなったという。 「ありがとうございます」  岩崎が、丁寧に頭を下げていた。 「それでは、秘蔵の野菜鍋を出しましょうかね」  慶松がげんなりしていた。 俺が夕食を作ると、野菜ばかりなので飽きているのだろう。  ビールを飲んでしまったので、岩崎の両親は今日はここに泊まり、早朝帰るという。 「岩崎、俺の部屋で寝ていいよ。俺、慶松の仕事部屋で眠るから」 「いや、俺、やっぱりリビングで眠りますので大丈夫ですよ」   俺が、慶松の部屋に行くと言ったせいなのかもしれない。 リビングで寝てもいいが、この家は部屋を広く取っているせいなのか、リビングが狭い。
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