射干玉〈ぬばたま〉の夜話 

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 崖下のキャンプに戻り、魔法使いが焚火の傍に並べ始めた物を見て、王子は身震いした。  血に染まったレースと錦紗の切れ端。ちぎれた首飾り。金髪の一房。  魔法使いは見事なルビーのはまった指輪を、王子の方へ差し出す。 「紋章入りです。大事な証拠、なくさないように。  これで王女の死が証明できる。  あとは魔物を捕らえるだけです」 「と、捕らえるの?僕達が?」  魔法使いはにこりともせずに言った。 「犯人を捕らえるか殺さなければ、手柄にはなりませんからね。  王女を救えなかったのですから、せめて魔物退治の勇者の称号を手に入れませんと。  魔物でよかった。  これが竜だったらとても私たちの手には負えなかったでしょう。  魔物の内でも獣形しかとれず、何より食欲を優先させるのは、魔力も弱く知力の低い奴等です。  なに、心配はいりませんよ」 「暴力は、嫌いなんだ」  若い王子はため息をついて言った。  魔法使いは杖を立てて握ると、眼を閉じて集中する。  魔物の残した軌跡を追っているのだ。  やがて、眼を開いて言った。 「魔物はまだ、上の洞窟を使っているようです。  あの泉で渇きを癒し、奥の窪みを寝所にしている。いつ戻って来てもおかしくない。  ここに罠を仕掛けましょう」
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