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何故、おろしたの? 本当に子供を産みたくなかったの? 僕と結婚したくなかったの?
曖昧で秘密で、都合の良い『Lover』な関係でいることを優先したの?
心の中で渦巻く嫌悪感。
そのうち苦しそうに茉莉花がしゃっくりをし始めたから、僕はさすがに彼女の背中を撫でた。
すぐに僕の身体に縋り付いてくる茉莉花の手や腕に戸惑う。
僕は茉莉花のことを本当に分かることができるのだろうか。
本当に茉莉花をずっと好きでいられるのだろうか。
茉莉花はいつだって僕に秘め事をしたまま、これからも自分で決着をつけてしまうのだろうか。
僕は茉莉花の『ヒメゴト』に、いつまでも近づけないのだろうか。
茉莉花をを抱きしめながら、僕は静かに泣いた。
窓の外からヒグラシの鳴く声が聞こえた気がした。
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