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高く遠く
幼い頃
青い空の中を白い雲が流れて行くのをよく眺めていた
白い雲はいつも、青い空の中を巡礼の長い行列の様に
ゆっくりと、静かに流れて行った
いつも風は静かで、陽射しはどこまでも眩しかった
雲は眺める度に少しずつ形を変えて行き
離れては散り、また結びつき、
時に何かを掴もうとする様に手足を伸ばし空を覆えば
寒さに震える様に縮こまり、
深呼吸をする様に深く厳かに
何かを求め、探し、祈る様に切なく
様々な姿を空の中に描きながら
ゆっくりと流れて行った
時々数羽の鳥が横切った
青い空と白い雲の狭間を
小さな幾つかの影が
じゃれ合うように走り回り
お互いを見失わない様に切なくせわし気に中を舞い
やがて消えて行った
いつでも空は青く、眩しく、静かで、透き通っていて
そして遠かった
空はあの頃と少しも変わる事なく
今日も僕の目の前に広がっていた
あの頃から随分と人も景色も変わったが
空は何一つ変わらず頭上に広がり、
雲は眩しい陽射しの中をゆっくりと流れて行った
僕は幼い頃のように、時々空を眺めた。
空は小さかったあの頃よりも静かに、高く、遠くにあり
何も語りかけてこなかった
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