闇、そして

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闇、そして

霧の中に沈んだ数々の景色 眼を閉じたまま唱えた黄昏の呪文 俯いたまま時が過ぎ、 凍りついたまま立ち尽くし 堕ちて行く記憶の断片を掴もうとして なす術も無く 闇に包まれたまま行き場所を失う ・・・そしてまた 気が付くと同じ場所に立っていた。 闇ばかりが目の前に広がる 朝も、昼も、夜も、 この闇に覆われてから 僕の眼の前で 世界は少しずつ色彩を失っていった 全てが海の底のように沈黙し 眼を凝らすと、 霧に巻かれるように消えて無くなって行った・・・ 僕はどんな間違いを繰り返していると言うのだろう? 失望と絶望がかわるがわる心の中に打ち寄せ 僕の心の奥の奥から指先の先までも押し流し 僕は、世界のはずれの闇の彼方まで追い遣られて行った 抗う術はない 僕は支配されたまま、永遠に抜け出せず 何を見つめても何も見つめられず 探すほどに失い、 近づこうとするほど遠ざかり 立ち止まり 怯え、震え、悲しみ、 そして深い闇に包まれたまま溶けてゆく 闇と共に移ろい、闇と共に沈み 闇と共に漂い、そして帰る場所も失い 闇の中に見えるすべてと 憎しみと戯れを繰り返し やがて跡形も無く果ててゆく
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