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季節
「さよなら・・・」
と言ったその言葉も
あなたには聞こえなかったかも知れない
人混みの中に溶けていった後ろ姿を
木枯しの中で
何時までも辿っていた
頼りなく風に揺れる
記憶の断片を繋ぎ止めながら・・・
街並みが立ち枯れた銀杏の梢を揺らし
空は灰色にくすんで
白く重たい雲が、ゆっくりと流れて行った
街並みは凍えそうだった
もうすぐ冬が始まる・・・
舞い落ちる落葉の中に
微かにあなたのため息が揺れていた
二人で歩いた道の上がゆっくりと落葉色に染まって行き
僕たちの足跡が
ゆっくりと落葉に埋もれて、いつしか見えなくなって行った
季節は終わり
また僕の眼の前を一つの時間が通り過ぎた
二つ、三つ・・・たくさんの
僕の魂のかけらを連れ去って・・・
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