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初めての会話
side.トラベルビー
思い返えせば、僕は失敗したことがなかった。
面白い研究対象を見つけても、想像の域を超えない。いや、しかしそれに対して絶望したことはない。
現実を理解し、その現状すらも面白可笑しく感じながら生きてきたつもりだ。
先日、ポスターに主演として写真を載せられていた美しい容姿の彼、好みの容姿だからと僕の悪い癖が出た、というのも否定はできないが、彼の舞台に魅力されたのは本当だ。
彼を次の研究対象に選ぶまで時間はそう、かからなかった。彼は僕にどのような面白を与えてくれるのだろうか。
そんなことを考えていたが、待ち人は一向に現れない、調査の結果ではこの時間に対象が出店でホットドッグを買うはずなのだが。
そんな空振りが一週間続き、漸く現れた対象が向かった先は、ホットドッグの出店ではなく、ドーナッツの出店だった。
若干の肩透かしを感じつつ、このチャンスを逃すものかと彼に話しかけた。
『君、この間ここでこれを落としただろう?』
対象は肩を叩かれ、少しビクついた後此方をゆっくりと振り返った。
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