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蓮花街の街中、周りに大きなビルやショッピングセンターが建ち並ぶ中、庭に松の木や桜の木がある大きな古民家が一軒、建っていた。
その古民家の門には、「結城探偵事務所」と書かれた看板が取り付けられている。
そしてその看板をよく見てみると、空いているスペースにお世辞にも綺麗とは言えない文字で、「何でも屋」と書かれていた。
その看板が掛かった門をくぐり、木々が立ち並ぶ広い庭を通り抜けた先に、ようやく大きな平屋の家が現れた。
「ったく、無駄に広いよな。 ここに来るだけで疲れちまうよ。」
茶色のトレンチコートを着た男性はボヤきながら目の前にあるインターホンを押すと、ポケットからタバコを取り出し、吸い始めた。
この怖そうな風貌をした四十代ぐらいの男性は警察官で、ある事件をきっかけに知り合ったこの家の住人たちの元へ、暇さえあれば遊びに来ている。
今日も事件の捜査に疲れたため、一眠りしようとやって来たのだった。
「なんだ、あいつらいないのか? ……っと、開いてんじゃねえか、入るぞ。」
タバコを一本吸い終わっても誰も出てこなかったため、男性は玄関の戸に手をかけた。
すると留守だろうと思っていたにもかかわらず、すんなりと戸が開いたことに驚きながら誰もいない廊下に向かって叫ぶと、男性は慣れた様子で家の中へと入っていった。
男性が家へ入ってからしばらく経った頃、玄関の戸が開き、二人の背の高い男性が大きなゴミ袋や熊手、塵取りなどの掃除道具を抱えて入って来た。
「あれ? これ敦士さんの靴じゃない?」
ゴミ袋を片付けようとしていた黒髪の男性は、革靴がきちんと揃えて置かれていることに気づくと、熊手や塵取りなどを抱えて玄関を出ようとしていた茶髪の男性に声をかけた。
「おっさん、また勝手に上がりこんでんのか? ……まあいいや、先にこれ片付けてくるな。」
声をかけられた茶髪の男性は呆れたような顔で靴を見ていたが、すぐに興味を失くしたのか、掃除道具をしまいに外へと出ていった。
一人玄関に残った黒髪の男性も片付けを終わらせるべく、落ち葉がたくさん詰まったゴミ袋をまとめる作業へと取り掛かった。
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