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「おい、おっさん起きろ。」
家の中へ戻って来た茶髪の男性は、迷うことなく居間へ向かうと勢いよく襖を開けた。
そして予想どおり、目の前で大の字になって眠っている敦士を見つけると、この広い家じゅうに響き渡るほどの大声で叫んだ。
あまりの声の大きさに、外から戻って来て台所でお茶を淹れていた黒髪の男性は驚いたようで、手元が狂い、急須のお茶を机に溢してしまっていた。
「人が気持ち良く寝てたっていうのに……。何なんだよ、剣斗。」
頭上で大声を出された敦士は不機嫌そうに起き上がると、目の前にいる茶髪の男性を寝ぼけ眼で見つめた。
「敦士さん、お茶飲むだろ?」
敦士の言葉に剣斗が言い返そうと口を開きかけたその時、タイミングよく黒髪の男性が居間に入って来た。
そして敦士に声を掛けながら、居間の真ん中に置かれた机に三人分の湯呑みを置いた。
「ああ。 悪いな、海斗。」
敦士は剣斗から目を逸らすと、海斗の淹れてくれたお茶を美味しそうに飲み始めた。
その様子を見た剣斗も文句を言うことを諦めた様子で座ると、テレビを付けてニュース番組を見始めた。
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