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「それで十分だろ。 お前は何かあれば、わしの顔見るなり『警察は何やってんだ!』って文句言ってくるんだからよ。 何も言ってこないってのは、何もない証拠だろ。 違うか?」
「確かに。 何かあれば敦士さんの顔を見るなり、文句を言いだすもんな。」
「これだけ殺人が続けば文句の一つや二つ、言いたくなるのが人の……。」
からかうような二人の視線に、剣斗はむきになって言い分けをしていた。
しかし難しい言葉に差し掛かると、次に何を言えばいいのかわからなくなったのか、段々と声が小さくなり、最後にはとうとう消えてしまった。
「そう言えばお前ら、異端児って聞いたことあるか?」
わざわざ難しい言葉を使おうとして自滅した剣斗を敦士は面白そうにニヤニヤしながら見ていたが、急に真顔になると二人に尋ねた。
「え? うん、知ってるけど……?」
「イタンジ……? 何だそれ?」
敦士がなぜ急にそんなことを聞いてきたのかと首を捻っている海斗の横で、剣斗もまた同じように首を捻っている。
「ほら、ばあちゃんが寝るときによく話してくれただろ? 神の国で神獣に育てられた神と悪魔の子が地上に捨てられ、落とされた場所がここ、那の国だっていう話。」
まるで聞いたことがないという様子の剣斗に、海斗は思い出させるように、ゆっくりと説明した。
「ばあちゃんが? ……ああ、あの作り話か。」
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