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ここは那の国、蓮花街。
近代的なデザインのマンションから、時代を感じさせる茅葺き屋根の平屋まで、様々な住宅が建ち並んでいる。
街の主要部分には高層ビルや大型ショッピングセンターなどが林立しているが、主要部分から一歩外に出ると、そこは昔懐かしい街並みが広がっていた。
おばあさんが営んでいる駄菓子屋に、子供たちの遊び場になっている空き地、そしてお隣同士、洗濯物を手に持ったまま垣根越しに話に花が咲いているお母さんたち。
そんな蓮花街で人々は時間に追われることなく、のんびりとした毎日を過ごしていた。
しかし最近では不可解な事件が立て続けに起こり、人々を恐怖に陥れていた。
その事件が最初に起こったのは今から約一年前、暑い夏の日のことであった。
その日も人々はいつものように、穏やかな朝を迎えていた……あの事件を知るまでは……。
事件は早朝、ジョギングをしていた男性によって発見された。
通報を受けた警察が駆けつけた現場には、背後から刃物で斬られた男性の遺体が横たわっていた。
その時は皆、その男性に恨みをもつ者による犯行か、通り魔だろうと考えていた。
ところがそんな人々の気持ちを裏切るように、第二、第三の犯行が立て続けに起こり、今もなお事件の被害者が増え続けている状況であった。
そのため最近では日が暮れると人通りがなくなり、まるでゴーストタウンのような静寂が蓮花街を包んでいた。
この物語は、そんな蓮花街で探偵事務所を営む兄弟が救い出した異端児と呼ばれる青年の話である。
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