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七つの大罪
七月も半ばを過ぎた。
ここ一月ほど通いつめているOLがいる。
彼女が座る席が彼、壮介の選ぶ席だったり隣だったりしていらない気を使ってしまう。
それと彼女は美味しいものを食べると黙って満足そうにひとつため息をつくのだ。
そろそろ土用の丑の日が近い。
夏がだんだんと厳しくなるだろう。
姉、女将に言われて昼間に暑気払いに店先に水をまいた。
夕方、仕事上がりのサラリーマンやOLがやってくる。今はビールのサーバーもレンタルしてるので冷えた生ビールも良く出る。
OL菊地柚がやって来た。いつも壮介が座る席に一人ポツンと座った。
少しして壮介がやって来て、彼女の席のひとつあけた席に着いた。
さっぱりとした突きだしにお冷や。注文は待つ。
ーー10席あるか無いかの店舗でカウンター席は板前や女将に近い。
壮介は航に軽口を叩き、女将は店全体を見回し回す。
今日は、体にこもった熱を奪うようなメニューが多い。
ーー暑いしな。
そんなに呑んだわけでもないだろうにOLは管を巻く
「私、グランブルーに知り合いいるんですよ。イタリアンドルチェ専門の」
「嬉しいはずなのにめでたいはずなのに嬉しくないんですよ」
「本当はグランブルー行けばいいのに行けなくて美味しいって評判のお店を食べ歩いてる」
「教会用語に七つの死に至る罪ってあるでしょ?七つの大罪。私きっと暴食が原因で死ぬんだわ…」
航はOL柚に水を出してやった。
氷の入ったグラスをあけ。
「板前さんごめんね、騒いで。おあいそで」
OLは店を後にした。
「…なす美味しいよ」
「ありがとうございます」
壮介は
「グランブルーってあれだよねぇ、海外資本のレストラン。オーナーの趣味か主義か腕と若さと顔の良さが採用基準って…採用されてる彼女の友人はさぞかしイケメンなんだろうな」
「…結構有名な話しなんですかね?」
「多分、女性保育士やら、お母様方から噂で聞くもん」
「でも、彼女、複雑そうでしたね」
「七つの大罪が~とか言ってたけど、その当人と何かあって会いに行けなくて自分は暴食の罪を犯し続ける。言い訳のような気もするけどなぁ~」
水の入ったグラスを出す。
カラン。
「どーも、ありがとう。俺も酔ったかな?」
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