11恋

2/42
前へ
/44ページ
次へ
 季節は夏の終わり。  世間様の夏季長期連休が終わり、カフェ兼アンティークショップであるこのAvec-toi(アヴェク-トワ)の賑わいも落ち着きを取り戻した頃。  俺、英優一は、オーナーである神条雪乃の提案で、2号店へと数ヶ月振りに赴いた。 (――いや、あれはもう提案ってより強制…命令に近かったよな)  眉間に皺を寄せ、溜息を一つ。 (大体、神条さんの思い付きはいつも突拍子も無くて困る。しかも他のメンバーには他言無用って……、可哀想に……)  1号店に残してきた他の仲間達を想い、心中でひっそりと合掌した。 (とりあえず、俺はこっちに集中しないとな)  車から降りて店へと向かいながら、事前に預っていた鍵を鞄から取り出す。  そして慣れない扉の前に立ち、鍵穴にソレを差し込もうとした時だ…―― (あれ?…開いてる……?)  腕時計をチラリ…。  開店時間までまだ30分はある。 (うちの店だと時間ギリギリに駆け込んでくる奴もいるってのに…)  榊さんの指導が行き届いている証拠だろう。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加