11恋

5/42
前へ
/44ページ
次へ
「………」 「…ん?…ああ、そうか。自己紹介しないと分からないよな。今日から3日間2号店を受け持つ事になった本店店長の英です」  彼に距離を詰め、宜しくと軽く手を差し出す。 (そういえば先月辺りにバイトを一人入れるとか言ってたな。見た感じ大学生くらいか)  感じ良く笑みを浮かべ、握り返してくれるだろう手をジッと待つが、何故か反応がない。 (えー…と?…何なんだろうな、この沈黙)  胸元につけられたネームプレートに視線を落とし、名前を確認する。 「…篤見(アツミ)…?」 「あっ、…あー…すみません。――篤見です。こちらこそ宜しくお願いします」  漸く握り返してくれた手にホッとしつつ苦笑を滲ませる。 「呆けても仕方ないよな。知らない奴が突然店に入ってきたら誰だって驚く」 「え?…ああ、それは確かにそうですね」 「何だ?歯切れが悪いな」  他に何か理由がありそうな言い回しだ。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加