私を名字で呼ばないで!

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幸人『あぁごめんごめん、おれ人の名前で呼ぶの抵抗ある人間でさっ』 夏芽『あなたの人間性なんて訊いた覚えはないのだけど?』 幸人『ごめん……ねぇ、何読んでるの?』 夏芽『恥知らずの恋』 幸人『えっ?』 夏芽『恥知らずの恋。恋愛小説よ。』 夏芽『この主人公はタイトル通りの恥知らずでそのせいで友達はいないの。思ったことをそのまま言葉にしては相手を傷つけ、興奮すれば周囲のことなんて気にもせず奇声を上げては人に煙たがれて、周囲から非人間扱いされる主人公だけどそんな彼が初めて恋をするお話なの』 幸人『う、うん』 夏芽『恋に落ちた主人公は真正面からその女性に告白をするわ。だけど相手は主人公と面識がある訳ではない。だから当然気味悪がって主人公から逃げ出してしまうの。その時主人公は初めて心に傷が出来るのよ!それで今までの自分の心無い言動、世間体を省みない振る舞いを思い返して恥じたのよ!』 幸人『へぇ……つまり主人公はその体験から恥を知り、自身の人間性を成長させていくんだね』 夏芽『……いいえ、違うわ』 幸人『えっ、違うの?』 夏芽『えぇ、考えてもみてよ。今まで相手を慮る発言をしてこなかった人間が後で恥を知った程度でそこから変われると思う?人間の性格は行動の集大成なのよ?なのに恥を知った程度で今までの自分を否定出来る程人間は薄っぺらくはないわ』 幸人『えっ……えっと』 夏芽『……もういいわ。私も名字で呼ぶような人とこれ以上話したくはないし』 幸人『…………』 夏芽『あなたももう少し思慮ある人間になるべきだわ。私は名字で呼ぶ人間と恥知らずは嫌いなの』
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