0人が本棚に入れています
本棚に追加
私は驚いて、玲子に視線を向けた。そこには、今まで見たことのない玲子がいた。
何種類もの喜びの表情が、彼女の瞳の奥で渦を巻いているようだった。その渦の中心に、時折、チロチロと氷のように冷たいものが見え隠れしている。それが何なのか、私にはわからなかった。
私の顔を見ながら、玲子がにっこり微笑んだ。
「あたし、ずっと待ってたの。さあ、はやく始めましょう、二人のために。深く考えないで。それは、とっても簡単なことなの」
その時、玲子に夢中なあまり冷静さを失っていた私には、彼女の放った言葉の異常さに気付く余裕はなかった。いやむしろ、異常な言葉さえも淀みなく淡々と言ってのける玲子の落ち着きように、頼もしささえ感じたのであった。
そして、私はこの時に初めて、玲子に不思議な能力があることを告白されたのである。
それは一種の超能力だった。彼女は、わずかではあるが、空間を歪めることができるのだ。次元を歪ませるのである。小規模ならば、自由に空間を切り取ったり、くっつけたりできるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!