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夕凪鷲里
運命という言葉があるとするなら
二人が出会った事は
運命と呼べ得るかもしれない
雛村小真知と彼、夕凪鷲里の出逢いは今より八年…いや、それ以上も前に遡る。その深すぎる禍根は、彼等しか知らないーーー
「…かつて死の風と呼ばれたお前が今やスーパーの従業員とはな…笑い話にもならんぞ」
「…日本に何の用だ」
「決まっている」
「…テラグラスか」
「…ああ。それもフラグラスではない…求めるものは
テラマリアだ」
テラグラスメタルという鉱石は自発的エネルギーを持ち、空気に触れるだけで水分を放出する
その水分がまた固体化した物をフラグラスと呼ぶ。そして、その本体は俗にテラマリアと名称される
TGSはその本体、テラマリアを守る部隊である
「…簡単にいくと思うなよ。TGSがいるんだぜ」
「…あの時代のお前達がいないTGSなど脅威のカケラもない…それとも、スーパーを辞めて戻るのか?」
「辞めねえよ。俺には関係ねえ事だ」
「関係無いだと…?よく言えたものだな」
小真知以外の二人は、夕凪シュリの顔を見て恐怖に慄いた
だが小真知本人もまた、同じ貌をしていた
怒りに満ちたその場を鎮めるものもあるわけなく、その空気のままシュリは腰のホルスターに差さった銃を抜き発砲した
弾は小真知の頬を掠めるが、小真知は顔色一つ変えなかった
「…関係あろうがなかろうが、俺はお前を殺す」
「…嫌だね」
「…抜け」
「…いや銃持ってねえし」
「…ではお前はここに何しに来た。素手で俺を御するつもりか?」
「俺はお前に…伝えることがあって来た。後はそこのクラックアップルの掃討だな」
宇和島を指差し小真知が言う
「…何だと!?クラックアップルを潰す?ふざけんなよてめえ!殺す!!」
「…黙れ」
「…っ!!」
シュリのその声の圧で、宇和島は声を殺した
「クラックアップルの件は置いといて、伝える事とやらを先に訊こう。何だ」
「……ああ」
小真知は一息つき、精一杯朗らかに伝えた
「…うちの店、いまバイト募集中なんだけどよ。暇なら働かねえか?」
「…は?」
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