雛村 小真知

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雛村 小真知

「あーっちー…」 七月の昼下がり、照りつける太陽の下にうなだれる男がいた 夏なのに長袖の黒いカッターシャツにカーキのデニムというなんとも暑そうな格好で陽に晒されている 「こんなに暑いとまぁ、地球の平均気温10年後には50℃くらいになってんじゃねぇーか」 一人ぼそりと漏らしながらふと街中の大きな街頭テレビに目をやる 「続いてのニュースです。和歌山の沿岸沖で、新たなテラマリアグラスメタルが発見されました。これにより日本が保有するテラグラスメタルは2つ目となり、世界では6つ目となります。尚、今回発見されたテラマリアグラスメタルはTGSに一任すると政府は決定しました」 「…っへぇ」 街頭テレビの周りは人々がざわついていた ーーーテラグラスメタルは、人類最後の資源と呼ばれ、自発的運動エネルギーを持つ鉱石である その為、半永久にエネルギーを生み出すとされ現在の世界ではほぼ全てのエネルギーはこれによって賄われている。 もちろん既存の火力、風力発電等も行われているがこの鉱石に依る部分が大半を占めている そしてテラマリアグラスメタルとは、その中でも更に高いエネルギーを持つテラグラスメタルの核とも呼べる代物である 世界規模で使われる稀少なエネルギー源が新たに発見されたというのだから、世間がざわつくのも無理はない だがそんな事は意にも介さないといった様子で男は歩みを進める 「おはようございます」 男は暫く歩くとこじんまりしたスーパーへと入っていった スーパーにはサンパールという看板が掲げられていた 「おはようございます、小真知さん!」 スーパーのエプロンをつけた従業員らしき女の子が男に声をかけた 「おはよう翔子ちゃん」 男は裏口へと向かいロッカーを開けエプロンを着け身だしなみを整える この店のバイトリーダー 名は雛村 小真知 「うっし、今日も一日頑張りますか!」 明るく意気軒昂な声で気合いを入れると、小真知は仕事を始め出す 物語は、この小さなスーパーの、一人のバイトリーダーを中心に始まろうとしていたーーー
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