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深澤 藍二
「いらっしゃいませ」
「…目の下のクマが凄いですね。店員さん」
レジを打つ小真知に向かって客の一人がボソリと漏らした
その客はスーツ姿にサラリと靡く黒髪、知的さを醸した眼鏡をつけたいかにもエリート商社マンといった風貌をしていた
「…夜中まで走り回って寝てねえんだよ」
イライラしながら小真知は返した。やりとりを見るに二人は旧知の仲のようだった
「…フッ、スーパーも楽じゃないな」
「…業務じゃねえよ。プライベートだ」
「プライベート?」
「まあまた話す。ありがとうございましたー」
小真知はまだ話を続ける男を強引にあしらってレジを済ませた
「…すっかりエプロンが馴染んだな」
そう言いながら男は店を出ていった
「今の、小真知さんの知り合いかな?」
「たまに来るお客さんでちょくちょく小真知さんと話してますよ」
「なんか知り合いぽいよなぁ」
「友達ですかね?」
「あんなバリバリの商社マンみたいな人と小真知さんが?」
「昔からの友人とか?」
他の従業員が離れた所で噂している。小真知はそんな彼等を見て目で仕事するように制した
その視線にそそくさと仕事に戻る二人
「…ふぅ」
小真知は昨夜の事を思い返していた
結局、テラグラスが最後まで見つからなかった為大毅と将吾はクラックアップルから逃げるようにこの街を離れた。組織に追われないように二人は遠くの地で二人で真面目に働いて暮らすと言い残し旅立った。小真知には精一杯の礼を尽くし頭を下げていた
しかし小真知の懸念は他の所にあった
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