巨悪

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巨悪

あちらこちらに傷を負いながらも翌日には仕事に復帰した小真知 周りは心配そうに声を掛けたが、やはり小真知は無理を押して出勤した 「酷い顔だな。初めて見たぞ。そんな顔のお前は」 レジ越しに笑う深澤をレジを打ちながら睨みつける小真知 「…何が面白いんですかお客さん」 「助けてやったのに随分冷たいな。命の恩人だぞ」 「…助かりましたよ。ありがとうございます。でも、もっと早く来てくれてたら傷も浅くて済んだけどな」 「馬鹿を言え。仕事早退しろってか」 「友人が危篤ですって言えばいいだろがい」 小真知は保険として深澤に自分の居場所をGPS登録したペンを胸ポケットに入れていた 携帯は破壊されたが、そちらは無傷だったため助かったのだ 「まさかこれが役に立つ日が来るとはな…」 「あん時は使ったことなかったよな」 「いやペンとしては使ってたが」 「あっそう…」 「それより…多分…まだ安心出来ないぞ」 「わかってる」 「奴等のリーダーがもうすぐ出所するからな」 クラックアップルはボス格の人間が投獄されていた為、幹部が全てを執り仕切っていた 「間違い無く狙って来るだろうよ。テラグラス」 「そもそもテラグラスは誰が持ってんだろうな。まだ見つかってないんだろ?」 そう、小野大毅が無くした組織のテラグラスメタルは未だに行方がわからないままだった 「一般人が手にしたとしたら、今度はその人が奴等に狙われる…それだけは避けねえと」 そんなやりとりの中、突然深澤が言葉を噤んだ 視線の先に目をやると、TGSの湯之浦が立っていた 「いらっしゃいませ」 一応形式的には客として扱う小真知 「…まさか先輩だったとはなぁ」 飛び出したその言葉に驚き、小真知は目を丸くした 「…西堂ですか」 「…元バスターとは言え公務執行妨害で立派な逮捕案件だぜ?」 「…何の話ですか」 「まだシラ切るつもりか。馬鹿じゃねえのか」 「まあいい…だがお前の大層な正義感は無駄になったな」 そう言いながら新聞紙をレジに投げつけ湯之浦は言った
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