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はじめに
本書で扱いますレストランは、このたび移転が決まりました。店名も変わり新たなスタートとなります。刊行される頃にはこの場所にこの店はこの形では存在しません。レストランの名前もなくなります。(※)
「今」のシェフと支配人のチームがそのまま動くので移転という発表ですが、現チームが元あった場所へ戻る形ですので、事実上の閉店と私は考えています。私見です。
急に閉店するわけにいかない場所です。急遽あてがわれた人事だったのかもしれません。閉店は一年前、今のチームになった時に既に決まっていたのかもしれません。邪推です。後半は邪推でした。
本書の刊行から遡ること一年前から構想を練り、原稿を七割ほど書いた時期に発表がありました。一時は白紙に戻すことも考えました。本気で。
それでも一年在ったことにより、さまざまな美的体験を得ました。私にとって大切な店であることに何ら変わりはありません。むしろ、なくなるからこそ記録に残す意味もあるだろうと、一旦折れた心を奮い立たせて書いているところです。
この経緯がなければ佐々木シェフの料理を知らなかった。この経緯があったから三田のグループ店=名前も場所も知っていながら私の意思で行かなかったレストランへ、行った。ディレクターの亀山氏にも大変お世話になりました。
大切な人との最後のお別れのような気持ちで、制作します。なんだかお葬式のようですね。
ヌーヴェルエールさま、長きに渡りありがとうございました。一生忘れません。ぼけたら別。
(※)「オーグードゥジュール」の名前を冠したレストランは、博多にオーグードゥジュール・メルヴェイユが残っています。
(二〇一七年六月現在)
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