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ふとリビングに目を向けた彼女は、ソファの上に人影があることに気が付いた。リビングのドアを開けたときは死角になっていて気が付かなかったが、夫はソファの上で横になって眠っていた。大方、彼女の帰りを待っているうちに睡魔に負けてしまったのだろう。
ソファで眠る夫の前に立ち、彼の髪にそっと触れた。
「寝るときは自室でって、言ったじゃない」
そう呟くと、彼女は床に膝をつき夫の肩を揺さぶった。
「こんなところで寝ていたら風邪ひくわよ」
彼女の二言目の呟きに反応して、彼がゆっくりと目を開けた。少しのあいだ彼女の顔をぼーっと見つめていたが、ハッとしたように飛び起きた。
「すみません、貴女が帰ってくるまで待っているつもりだったのに、つい眠ってしまいました」
慌てたように謝罪の言葉を口にする彼を見て、彼女は静かに首を振った。連絡をしなかったのはこちらなのだから、謝る必要なんてないのに、と思いながら。
夕食は外で済ませたこと、今夜はシャワーを浴びてそのまま寝ることを夫に伝えると、彼女は自室に向かった。
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