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窓から差し込む西陽が眩しくて、彼は目を覚ました。
窓辺に置かれた観葉植物の影の長さから考えて、夕方五時をまわった頃だろうか。いつの間にか眠っていたらしい。
最寄りのスーパーでブリと大根、晩酌用の刺身を購入したあと、野良猫に見送られて買い出しから戻ったのが三時前だった。部屋を片付けてソファで少し横になったところまでは覚えている。
毎日朝から深夜まで働いている彼女の事を思い出し、彼はゆっくりと身を起こした。
彼女とは、結婚して一年になる彼の妻のことだ。
大企業のトップである父親から会社の一つを任されて、毎晩遅くまで働いている。彼女の帰りを待ちながら、毎日深夜まで起きているのだから寝不足にもなる。昼寝でもしないと身体がもたなかった。
おそらく彼女も、栄養ドリンクやら休日のエステやらで疲れを無理矢理癒しているのだろう。
彼の前では決して弱音を吐かず、疲れている様子も見せない彼女を思い出し、彼は表情を曇らせた。
サイドテーブルに置かれた携帯端末を手に取り、新着のメールが届いていることを確認する。差出人は彼女だ。
端末を片手で操作して内容を確認した。本文は一文だけ。
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