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幸いにも彼女はいつも、薄手ではあるがカーディガンを羽織っていた。彼女に気があるとはいえ、肌の露出すらない姿に、ただシャワー直後というだけで欲情してしまうようなことはないだろう。それにこんなことで行動範囲を狭めるようでは不自由極まりない。
深く考えることをやめ、彼はリビングのドアを開けて廊下に出た。
そして想定外の事態に陥った。
シャワーを浴びて浴室から出てきた彼女とまんまと鉢合わせてしまった。おまけに、あろうことか今日の彼女はカーディガンを羽織っていなかった。
彼の姿を目にして慌てて肩にタオルをかけたようだが、開いた胸元と露出された白い腕がほんのりと色付いているのが見て取れた。
彼の視線に気がついてか、彼女が気まずそうに目を逸らし、数歩あとずさる。その様子から、彼は彼女に“男”として警戒されていることを容易に感じ取った。
やはり、自分と彼女の間には愛情などというものは存在しない。二人の夫婦関係は契約上のものでしかないのだと実感した。
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