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 この婚姻がどのようなかたちのものであっても、彼にとって彼女は契約など関係なく、守るべきひとであり愛すべきひとであり、“彼の妻”そのものだった。 「嘘はついていません。……俺は、貴女に告白したあのときから、ずっと貴女のことを愛しています」  瞳を潤ませて彼を見上げる彼女を愛しく思った。彼女の傍に膝をつき両頬に手を添えて、彼はずっと言えずにいた想いを吐き出した。 「貴女の言葉にはいつも、肝心なものが足りない。一番言葉にして欲しいことを胸の内にしまいこんでしまう。……それでは駄目なんです。隠されてしまったら、俺はその真意に気づくことすらできない」  最初の告白を断られて、婚約者がいたことを知って諦めた。  数年ぶりに再会し、懐かしくて食事に誘ったとき、快く承諾してもらえたのが嬉しかった。  婚約者と上手くいかないことを打ち明けられ、突然求婚されて困惑した。  そして選んだ。  愛されなくても、傍にいることができる"契約”を結ぶことを――。
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