鳴らない電話

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ーーーきれいな大人の男のひと。ねぇ、せんせい 貴方の魂に消えない傷痕を残してあげる。 歳の離れた兄から電話があったのは5月の連休の前で、帰省と兄の息子の家庭教師を依頼するそんな電話だった。 兄には息子が一人いる、学生結婚で早くにもったその子を兄は溺愛していた。 正直、実家にあまり行かない俺は、その甥の姿は遠い思い出としか認識していない。 人見知りする引っ込み思案な男の子か女の子か区別のつかない本の子供の頃の思い出。 もう中学生になったらしい。 人見知りはおさまったらしいが、引っ込み思案が強く、不登校気味だと兄は言った。 大事な時期だろうに、人間関係の育成や社会生活を考えると、学生生活は意外と重要だ。 兄が心配するのも分かる気がする。 学力事態も差が出てますます学校から遠のいてしまう。 俺は自分の学業に区切りをつけ、連休中の個人家庭教師の任を覚悟した。 GW、久しぶりに帰った実家に当然のごとく自分の部屋は無い、一階の和室兼客間を提供された。 父母はそろって旅行で。出迎えてくれたのは兄夫婦だった。問題の甥っ子は自室らしい。 しばらくリビングで兄夫婦と談笑し甥っ子の部屋に向かった。 ドアをノックする、返事は無い、入室のむねをつげ部屋に入る。 甥っ子は物憂げに窓辺で外を眺めていた。 陽光は色素の薄い髪や体毛をすかし甥っ子、永和を輝かせて見せた。 さすが美男美女のこ、きれいに育ったなー… 中性的な魅力と儚げな雰囲気、兄が溺愛するのも分かる。
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