知らないカミサマ

男の人の願い

　しばらくして、それはそれは豪華で大きくて立派な"家"に着きました。

　男の人は初めて来た家ですが、連絡がされていたのでしょう。
　使用人たちが男の人を出迎えました。

　出迎えの中に、見知らぬ、しかし見覚えのあるような、派手な格好をした女の人が混じっていました。

「あらあなた、久しぶりね」

　声を聞いて、ようやくわかりました。
　それは男の人の妻でした。男の人は、何か言おうとして、けれど言葉が出てきませんでした。
　かつての彼女は、質素で慎ましく、物静かな人でした。
　それなのに、今目の前にいるのはまるで別人なのです。

「何か言ったらどうなの？　……まあいいわ。これからパーティなの。じゃあ、いってくるわね」

　そう言って彼女はあっさりとどこかへ出かけてしまいました。
　男の人はそれをただ呆然と見ていました。