無二の言葉

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「そっか。いいちゃんのお家、離婚してたのね。ごめんなさいね、私知らなくて」 「え!何で謝るのイイさん!本当にそういうの気にしてないし、それにうちの両親達は不仲で離婚した訳じゃなくて、事情があったので」 「え?不仲じゃないの?どういうこと?」 手元に置かれたお洒落なカップの中にあるレモンティーに口を付け、一息ついて軽く両親のことを話す。 私のために離婚をした両親、世間でいう不仲だとか浮気だとかギャンブルだとかそういう嫌なイメージなんかなくて、父の体調不良により本当は愛し合っていたけれど子供のためを思い別れてしまった両親の話ーーーー。 私がシングルマザーという世間からの目を特に気にせず過ごしていけたのも何処かドラマのような両親の話を信じていたからかもしれない、私の両親は普通の離婚した家族とは違うのだ、と、何処か幻想めいた考えを持っていたのかもしれない。けれど。けれど。 「ーあなたのお父さんとお母さん。きっと仲が良くなくて離婚したのよ。」 些細な亀裂というものは本当に何てことのない日常の中で起こるのだなと、他人事のように私はその言葉を耳にしながら少し冷えたレモンティーを喉の奥にまで流し込んだ。
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