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ー♪♪♪!!!!
後方から、高らかにラッパのかん高い音色が響き渡ってきた。
「小隊、気を付け!」
「気を付け!」
ほぼラッパの音色と同じタイミングでウィリアムが号令を小隊に掛けると先任下士官が復唱して小隊は休めの姿勢から気を付けの姿勢へと変わった。
続いてウィリアムはよく耳を澄ませて次のラッパの音色に注意する。
♪ーー♪ーー!!
(信号ラッパ、長音二回。攻撃はレッド!)
ラッパの音色での号令にウィリアムは息を腹に入れて小隊の末端までも徹底出来る様に声を張り上げる。
「小隊!攻撃属性、レッド!玉込め用意!」
回れ右をして小隊に向き直り、命令を下す。
彼の兵達は、一斉に動き出す。
腰に吊るしたポーチから、砂状になるまで細かく砕いた水晶と小さな鉄球を一緒に紙で包んだペーパーカートリッジと呼ばれるモノを取り出して、口で片方を噛み千切り、マスケットへと水晶と鉄球を入れる。
そして、条杖で銃内部へと突き入れる。
ー精霊よ、四つの源で最も苛烈なる、かの精霊よ。今、我の願いを聞き入れたもう、目の前の御敵を焼きつくしたもう、偉大なる火の精霊、イフリンタルよー
魔力は鉄製の条杖から、粉状の水晶に伝達してマスケットの弾丸に火の精霊の属性が付与されていく。
その間、ウィリアムは腰のサーベルを抜き放つと鍔にはめ込まれた透明な水晶を顔の前にやり、兵達と同じ詠唱をした。
サーベルの水晶は徐々に紅く染まる。
ウィリアムのサーベルに火の精霊の属性を込めたのだ。
「小隊、玉込め良し!」
全隊員がマスケットの玉込めを終えた事を先任下士官から報告受ける。
「小隊、前進準備!」
ウィリアムが更に号令を発すると、列中の先任下士官が小隊の際前方に進み出る。
ちょうど、指揮官と先任下士官の場所を入れ替わる様にウィリアムが小隊の側方に移動する。
「担えーーー銃ッ!」
まるで小隊が一つの生き物の様に乱れる事なく動く。
「前列、控えー銃ッ!」
いよいよ、前進が開始される。
ウィリアムは喉がカラカラに乾いていくのを感じた。
極度の緊張の中で、前に居る先任下士官が自分の方をチラチラ見ているのに気付いた。
(あっ!何てこった!大事な号令を一つ忘れていた!)
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